ナスタチウム仲間の花を分解・観察してみると
花の分解


ナスタチウム仲間が続々と開花し,しばらくはその美しさに見とれていましたが,ふとトリコロルム(T.tricolorum)の花を見ていて,この花の造りはどうなっているのだろう?と思いました.そこで,ナイフとピンセットを取り出し,花の分解に挑戦です.

●トリコロルム(T. tricolorum)の場合

花を分解するため,トリコロルムの花を1つもぎ取ったのですが,その時に気づいたのは,花茎(かけい)の色です.茎に近い所ほど緑色で,花に近い所ほど黒っぽい色をしています.はっきりした違いなのに,株全体しか見ていない/花しか見ていないと,案外気づかないものだ…と自分自身驚きました.

写真:取ってきたトリコロルム.花茎の色が花に近い程黒っぽい.
トリコロルム

そっとガクの一部にナイフを入れて,「トリコロルムの開き」にしてみました.咲いた花を見て,「開ききらずになんだか中途半端な咲き方だなぁ」と思っていたのですが,なんと花弁はガクの内側の途中から"生えた"ような感じで付いています.そしてガクの外にはチョロッとだけ黄色い花弁が出ているだけです.なるほど中途半端なワケが分かりました.

写真:左から 開花状態のトリコロルム,開きにしたところ,花弁のアップ
開花状態のトリコロルム トリコロルムの開き トリコロルム花弁のアップ

それにしても赤,黒,黄色の3色の組み合わせが鮮やかで見事です.名前の由来も tri- (トリ;3つの)colorum(コロルム;色)で納得です.ガクの先端部は黒,距の部分も黒っぽい暗赤色で,距は1.5〜2センチほどの長さがあります.これは普通のナスタ(T. majus)は別として,ナスタ仲間のうちではかなり長い方です.雄しべは全部で8本ありました.

写真:左から 長い距(右の2つは花弁の付いたガクを切り取ったもの),花の中央部
トリコロルム計測 トリコロルム花の中央部

さて,このトリコロルムですが開花した状態でしおれるまで,ほとんど香りがありません.距は例によって蜜の倉庫ですが,どうやって虫を呼んでいるのでしょうか.まだ結実しているものは見あたりませんが,種も流通している所を見ると,ベランダ結実も夢では無いでしょう.今後が楽しみです.


●品種不明の黄花の場合

黄色い小花がたくさん咲いているこの品種不明の株(球根入手当時はポリフィラムだと信じていましたが,実はこれは間違いだという事が後に判明しました).黄色い花弁は5枚ですが,そのうち2枚には赤っぽい筋状の模様が付いています.そこで,この花弁だけを切り離してみました.花弁は1センチ足らずで「小花」ぶりをよく現しています.3ミリほどの短い距には蜜がたまっていました.雄しべは8本でした.

写真:左から 模様の付いた花弁,模様無しの花弁,花の中央部
ポリフィラム模様付きの花弁 ポリフィラム模様無しの花弁 ポリフィラム花の中央部

この品種にはスイートアリッサムのような香りがあります.たくさん咲いているとやはり香りが強いです.何よりも黄色い花なのでよく目立ちます.既に結実しているものもあるので,種採りが楽しみです.


●青花ナスタ(T. azureum)の場合

青花ナスタは何と言っても開花直後と翌日,翌々日の花色変化と花の大きさの変化が面白いです.花の色は時間と共にだんだん淡くなってゆき,花の大きさはだんだん大きくなっていきます.開ききった花は直径約3センチほどです.ここでは花弁を1枚切り取ってみました.淡い紫色の花弁,中央部が白のグラデーションがきれいです.雄しべはよくわかりにくかったのですが,8本あるように見えました.

また,トリコロルム,ポリフィラム,アズレウムで花弁の大きさを比べたら,圧倒的にアズレウムが大きく,1つ咲いただけでも存在感がある青花ナスタの印象を受けました.もっともトリコロルムのその色合いの独特さでは他にひけをとりませんが….

写真:花弁を1枚切り取った青花ナスタ,花の中央部,トリコロルム・ポリフィラム・アズレウムの花弁比較
アズレウム花弁 アズレウム花の中央部 花弁比較

青花ナスタは普通花弁が5枚ですが,今年は1つだけ花弁が6枚の花が咲きました.今までも咲いていたのかもしれませんが,気づいたのは今回が初めてです.

写真:6枚花弁の青花ナスタ
6枚花弁のアズレウム

青花ナスタにはニオイスミレのような香りがあります.これも開花直後にはほとんど感じられないのですが,花が開ききるにつれ,香りが出てくるような感じです.気温にもよるのでしょうが,開花数日後から香り始めるようです.大きさ・色・香りと,開花した花自体にも成長段階があるようで興味深いです.